Nimrod

今年の第160回芥川賞を受賞した小説「ニムロッド」。ビットコインの莫大な資産をもつ人間の王ニムロッドが、役に立たない「駄目な飛行機」のコレクションを趣味とするが、この「駄目な飛行機」がもうこの世になくなったとき、人間でいられなくなるというストーリが、いろんなことを連想させてくれました。

不完全なものに愛着をもつ気持ちというのは、そこに人間らしさを感じます。笑いが生まれるのもそんなときでしょう。
私はアナログシンセサイザが好きなのですが、この飛行機に近いものを感じます。(バネルのルックスが計器のよう・・)
発売時は高価でなかなか手に入れることはできませんでしたが、当時YAMAHAの名古屋店では多数のアナログシンセが専用ブースがあり、随分と入り浸りました。鍵盤を押しても思うように音程のある音がでなかったりノイズがでることかとても衝撃的でした。デジタルシンセの時代になって、逆にアナログが見直されたときゲームの音楽制作をしたこともあり、テクノ系の音楽にはまりました。しかし今アナログシンセをさわる感覚は、これとは違い愛着に近いものがあります。
現在聴くとすればダンス系の曲のベース音くらいでしょうか。これもかなり加工されていのでピュアなアナログシンセの音はほとんど聴くことがなくなりました。

「ニムロッド」にでてくる飛行機のコレクションときいてすぐに思い浮かんだのは、国立アメリカ空軍博物館(オハイオ州デイトン)の展示でした。10年くらい前、仕事でしばらくこの地域に滞在していたことがあり、現場のメンバーから絶対行った方がいいと勧められて行った記憶があります。ライト兄弟が飛行機の開発をした航空機発祥の地でもあり当時の飛行機から現在までの様々な飛行機が展示されています。その大きさに圧倒されました。

またこの地はWGIというマーチングバンドのカラーガード、パーカッションの大会が行われているところです。軍隊があることが関係しているのかもしれませんが、DCIというマーチングバンドの大会もこの地域で行われます。(注:当時から私の知識はアップデートされていません) (https://wgi.org/)

WGIのパーカッション部門の大会は、マーチングバンドが管楽器を省いて打楽器だけにした構成なのですが、打楽器だけの楽曲なのでドラマーにとってはなかなかエキサイティングなものです。ベース、テナー、スネアドラムが細かいリズムでユニゾンするときはまるでマシンガンを連想させます。しかし人間がどこまで正確に叩こうと機械的に聴こえないから不思議です。限界がありそこに安心感があります。昔YMOがテクノミュージックといわれ機械的に冷たい感じ、と評価されていましたが
(無機質なアナログシンセとタイトで正確なドラム、やっている人たちはそれを狙っていた) 実際は人間味がある音楽で、これに近いかもしれません。(人間が近似すればするほど人間味が際立つ)


(動画を静止画にしているので画質が・・10年以上まえのデジカメですし・・)

これまでもマーチングドラムは好きだったのですが、ドラムセットと一緒のフィールドで考えたことがありませんでした。WGIを見たときに多くのチームでこの組み合わせで演奏していて、こういうのもありなんだ、という感じにさせてくれました。(このWGIに刺激されて、アメリカから帰ってからはブラスト人気も手伝い、パーカッションチームを作っていろんなイベントで演奏したこともありました。)
このときの記憶が蘇り、また叩いてみたくなりました。

ところで、「ニムロッド」とは?
Weblioで調べると、聖書からニムロデ(Noahの曾孫で狩りの名人)、狩猟家、とあります。
だから戦闘機の名前とかに使われるのですね。
またエドワード・エルガー作曲「エニグマ変奏曲」第九変奏の愛称でもあるようです。
安らかなハーモニーから入る曲で、戦没者追悼によく演奏されるようです。
3/4拍子の記譜ですが、2/4,4/4の変拍子っぽく聴こえます。(波乱と安堵が同居するような・・)

ということで、久しぶりにいじるアナログシンセYAMAHA CS-15とこれまた久しぶりに叩くマーチングテナードラムでコラボしてみました。シンセはエルガーの「ニムロッド」の冒頭のメロディラインになっています。

ちょっと完成度が低いので、そのうちこっそり差し替えるかも。(来週発表会なのでちょっと練習時間が・・)
シーケンサは使えないので、 LFOでリズムを刻みます。LFOがプロペラのように・・
しかし、こういう組み合わせで演奏するのは本当に楽しいです。
「駄目な飛行機」は有限でしたが、音楽は無限に楽しめます。
(そもそも音楽は不完全なのかもしれません。ピタゴラスはきっとそう思ったと思いますが・・この件はまた)

今回、やはり打楽器はコラボ力があると思いました。またいろいろと試していきたいです。




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