月別: 2023年4月

 

May you rest in peace

YMOメンバーのお二人がつづけてお亡くなりになり、寂しい気持ちとともに当時熱中した記憶とさまざまな感情も思い出されてきました。YouTubeでのYMOに関する過去動画がこれに拍車をかけています。

Yukihiro Takahashi / YMO

Ars longa, vita brevis.

前回投稿から少し落ち着いた今、ちょっとだけ自分にとってどういう存在だったのか、整理してみたくなりました。


(下手なのに、今どうしても弾いた動画をつくってみたかった。。)

何に一番熱中したかと言えば、やはりアナログシンセサイザーでした。当時名古屋の大須やヤマハの店頭にあったことを記憶しています。得体のしれない音ができる装置ということで夢中でいじりました。楽曲よりもそちらの興味が大きかったです。
楽曲を深く掘り下げたのは、ゲーム音楽を作る仕事をしているときで、仲間もみんなYMOフリークであることもあって音作りのときに、YMOの話題でもちきりなりました。教授が最後まで愛用していたシンセ、プロフェットファイブは憧れの楽器で、高価で買えないためその音をSoundCanvasでシミュレートしたりしていました。この時代、彼らの新しい試みが刺激的で、音楽が自由で楽しいものであることを満喫していました。そのため一挙手一投足に反応していた時期もありました。たとえばドビュッシーが好きだといえばそれを聴き、高橋悠治氏と対談したといえば、その人の本を買ったりといった具合です。教授をハブとしていろいろなことに興味をもち、こういった刺激から創作意欲が掻き立てられるという習慣がつきました。それゆえ新しい刺激があるたびに、現在でも自分にしか作れない音楽があると信じ込むような始末です。

技術面では教授のハーモナイゼーションか好きです。あの親しみやすい「戦メリ」のメロディーにも4度下の音が倍音のようにくっついていて、深みを出しています。「邂逅」もそうですが、音色としてハーモニーというのか、聴いたことのない音のイメージを感じさせます。また「千のナイフ」などにある無調的な部分も好きで、こんなカッコイイ聴かせ方があるのか、と驚きました。(この後無調音楽についてのめりこんだのは言うまでもありません)またキーボードプレイ全体についてとても好きで(ライブも)、U.TのMC部分、「高橋さんのドラム、すごいですね」ですが、「坂本さんのシンセパッドもずこいですね」といいたくなります。


(練習不足でスミマセン、パターンの繰り返しがきつい。。40年以上前の楽曲とは思えない新しさ。ライブでは演奏されていない曲だが、どうやった叩こうかと思わせる曲。)

シンセサイザやサンプラーの技術がこれ以上できないことはない、というところまで行き着くと、新しい音に刺激を受けることが少なくなりました。また音楽も多様化して、かつてほど影響力のあるものが出現しにくくなってきたと思います。その中でもまだ新しいものが作れると信じています。教授が晩年レコーダを街に持ち歩ている音をサンプリングしている姿を動画で見ましたが、とても嬉しくなりました。さすが、今も昔も変わっていないと。

音楽にはいろんな楽しみがあります。聴くこと、演奏すること、作ること、学ぶこと、妄想すること、などなど、どれも深く無限に楽しめます。これを通して成長し、そして様々なことに目を向けさせてくれます。YMOのメンバーは若い時期に音楽の面白さについて膨大なインプットを持っていたことがすごいと思います。当時は今ほど簡単に情報を入手することが簡単ではなかったことを考えると、相当精力的だったことが想像できます。彼らを夢中にした音楽もあるわけですから、やはり音楽の力は偉大と言えます。

音楽に夢中になれることは、幸せなことです。また平和な世の中でないと音楽を楽しめません。このことを人一倍形に表していたのは教授かもしれません。

次の世代のために、引き継がないといけないと、あらためて思いました。

最後に、明るくて楽しくて自由な音楽「い・け・な・い ルージュマジック / 忌野清志郎 + 坂本龍一 【))STEREO((】」YouTubeより引用します。

Ars longa, vita brevis.

また衝撃的なニュースが飛び込んできました。教授の訃報です。
1月のユキヒロ氏の訃報から間もないこともありとてもショックです。
音楽に対する実験的な姿勢には、とても影響を受けました。このようなブログを書いているのも元をたどれば教授にいきつきます。

YMO時代のヒット曲も好きですが”B-2 UNIT”,”音楽図鑑”,”未来派野郎”といったソロ作品がとても好きでした。また”戦場のメリークリスマス”のような美しいメロディーも好きですが、シンセ、サンプリングを駆使したノイジーでマッドな教授にはとても刺激を受けました。音に対するあくなき探求には、そのベースには音という本質的にものに対するものへの好奇心、音に対する敬意があるからなのではと思っています。世界の音に対する興味、それは音という自然への興味であり、これが教授の環境問題などの活動に現れている気がします。こういう政治につながる活動は誤解を生みやすいので、表現が非常に難しいと感じたことがあります。(政治活動をする動機というのは人それぞれ違いますが、正反対の意図を持った人が同じ運動をしていることもあるからです。影響が大きい人は本意でない利用をされることもある。)

闘病をしながらの創作活動に、この人だからこそこのような偉業を残せたのだと確信しました。

人間だれしも死はおとずれますが、その人の思い出は残り続けます。タイトルの言葉は、インフォメーションからの引用ですが、今これを痛感しています。

あらゆる栄誉をすべて手にいれたようなアーティストで、これに憧れて関連する様々なことに関心をもつこととなり、そのおかげで充実した音楽ライフを過ごせました。

ご冥福をお祈りいたします。

Ars longa, vita brevis.
「芸術は長く、人生は短し」

4月8日追記

May you rest in peace

Prompt Engineering

生成系AIが最近話題になっていますが、私も下記ブログでいくつか取り上げました。
ChatGPT
https://decode.red/ed/archives/1314
Stable Diffusion
https://decode.red/ed/archives/1335
Text2Music
https://decode.red/ed/archives/1349
これらすべてテキストでAIに対して指示を出して、その結果を得るものです。
“ChatGPT”はテキストを返して会話を、”StableDiffusion”は画像、そして”Text2Music”は音楽を生成します。このようなTextによる対話的な操作のことをプロンプトエンジニアリングといいます。コンピュータを詳しく扱える人ならコマンドラインの入出力をイメージするとわかりやすいでしょう。

下記の一つ目の例では、アーケードゲーム音楽を作るように指示を出し、それにつづいてどんな曲にするのか説明を加えています。
https://google-research.github.io/seanet/musiclm/examples/

また違うサイトですが”Text2Music”ではmubertのサイトをつかって音楽を生成してみました。
https://mubert.com/render


うーん、ちょっとイメージがちがいますが、一応生成しました。

生成系AIでは、入力された画像や音声などに対して、指示を出すこともできます。たとえば~風の音楽にしてとか、鼻歌から伴奏をつくったりとか、できるようです。そのうち自分の歌や演奏に、リアルタイムに伴奏してくれることも可能になるでしょう。

ここで思うことは、これができたとしてどのような未来を想像したらいいのだろうか、ということです。前回の投稿”IOWN / NTT”、ではリアルタイムで遠隔地と人と演奏する話題でした。また最近の画像処理では、自分と違う人の顔であたかも自分が話をしているように見せることもできます。OpenAIのChatGPTで驚いたことの一つに、文章の構成力でしたが、翻訳の精度にも驚かされました。(音声のテキスト化ではWhisperがあります)これらが簡単に扱えようなの世の中になったとき、人類のコミュニケーションの仕方が劇的に変わると思っています。(音楽によるコミュニケーションはさらに高度なものに。あらゆるチームプレイが高度化)

Text2〇〇でつくられる画像や音楽が、人の創造性を超えるとかアーティストの仕事を奪うとか言われることがありますが、私はそれはないと思っています。それができたしてもそこに面白さがないからです。(面白いことは自分がしたいから)また私の専門分野でもありますが、ローコードやノーコードの流れの中、さらにChatGPTによってプログラマの仕事が少なくなるなどとも言われます。しかし少なくならないといけないのではと思っています。

インターネットが普及する前、「ソフトウェアクライシス」という言葉があったのをご存知でしようか。今後このままでは何十万人のソフトウェアエンジニアが足りなくなる、という危機の話です。当時はそれぞれのソフトハウスで独自に開発をしていたため、ソフトウェアの開発効率も悪く、工数がかかっていました。しかしインターネットが普及してオープンソース開発が当たり前になってくると、そのようなことを聞かなくなりました。オープンソースというのは、プログラムの設計図となるソースコードを公開するということです。当時は企業秘密に近いものがあり公開などとんでもない、といった風潮でした。それが今では公開した方がバグの発見確率も高くなったり、プロダクトに参加する人が増えることから、品質もあがるなどのメリットがあります。なによりも大量のコードを再生産できたことで社会のITインフラを支えことにつながりました。これから先さらにITインフラが高度化、複雑化するにあたり、大量のコードが必要になります。(次のクライシスはAIが解決) ITエンジニアの仕事の種類はどんどん変化しますが、これに携わらなければならない人は減らないと思っています。
ここで一つの教訓があります。未来を予測するときに現在の延長で考えるとよみ誤ります。このままでは~になる、という悲観的な予測が世の中にはあふれています。

ITに関しても労働力人口の減少をAI、ロボットがカバーするという考え方と似ていますが、次の社会課題の解決にAIが不可欠になってきたことが、次第に現れるようになってきた気がします。一番深刻な課題という意味では、環境問題や戦争ですが、前者はテクノロジー、後者はコミュニケーションが解決に寄与すると期待しています。