月別: 2019年7月

 

Atonal Music

無調音楽という調性(ハーモニー、スケール)を感じられない音楽というものにチャレンジしてみました。

「調的な原理と無調の原理とが、完全な対立物であるとは私には思えない。後者はむしろ、調的なものの継続的な発展の帰結であり、そこには漸進的な変化があるものであって、断絶や暴力的な跳躍などはないはずである」(「バルトーク音楽論選(ちくま書房)」より)

調性音楽の理論の上にたってその解釈を深めことによって無調というものを考えていくという姿勢と解釈しますが、無調をどのようなものと定義するところから、形にするところまで幅広い作業が必要だと思っています。無調に対する解釈にもかなり幅があることから(でたらめとは違う)、誤解を受けやすいテーマですが、それだけ様々な角度から音楽を見つめることができる魅力的なテーマです。

調性を感じる音楽というは、1オクターブ12音の音の選択に偏りが規則的な偏りを持っています。これを回避するため無調では12音全て平等に扱う手法がありますが、たとえ12音を使うにしてもドレミファと2度音程が続くとスケール感を感じてしまうことから、音程もすべて違うものを使う試みがあります。

参考) 総音程音列

(Lisp (+ List Processor))

私の試みとしては、12音を使うことよりも音程感を希薄にすることに重点を置きたいので、全音音階の6音C,D,E,F#,G#,Bb)で組みたてます。(ジョージラッセルのリディアンクロマティックコンセプトでは補助オーギュメントスケール。CメジャースケールのFより倍音列的にはF#にする(Cリディアンスケール)方が自然という。鉄腕アトムの曲でも出現)
6音にすることによって、短3度音程がなくなりマイナースケール、マイナーコードが出現しなくなります。また完全5度もなくなりドミナントモーションも不可能になります。また短2度もなくなり、不協和音がなくなり聴きやすくなります。
ただそれでも2度が続いてしまうと、リディアンスケールを感じてしまうので、12音の総音程音列と同じしくみで6音による総音程音列をつくりました。

なんと4つの音列しか存在しません。かなり安易ですが、この4つの音列を4つの音域でおなじみSonicPiを使って鳴らしてみることからはじみてみます。

音列は音程をもとにして算出しているので、開始する音は任意です。第一音が全て同じだとその音の支配力が高まるのでづらしています。また低音ほど音数をすくなく、6音という少ない音数でループしてしまうので、ちょっとぼやかすためにポリリズムっぽくしています。
こう考えると曲として聴かせる工夫にはリズム理論が重要になってくることを実感します。
音楽理論と呼ばれるもののほとんどがハーモニーはピッチに関するものですが、それだけリズムは体系化しにくいのかもしれません。
(上で紹介したバルトークの書籍ではブルガリアンリズムについて多く書かれており、これもとても興味深いです。)

打楽器などの倍音が多く音程感を感じにくい楽器を使うことによって、無調音楽を表現する試みもあるようです。

前回の投稿でつかった、テナードラムは6個の太鼓を鳴らしますが、この音程感で曲を「歌う」こともできます。

Nimrod

「われわれの時代の音楽は、無調の方向に決定的に向かっている」

これも上記書籍の引用ですが、ひと昔前にはやったサンプリングミュージックはこの流れの中で説明できるものなのかもしれません。また無調というカテゴリーにはいるかどうかわかりませんが、この単調なスネアドラムの音だけの曲がパフォーマンスとして成立する以下の動画を見た時、パフォーマーの素晴らしさはもちろんですが、オーディエンスもすばらしいと思いました。

音楽も人も進化することがよくわかります。
このマーチングスネアドラムの音はハイピッチでリリースタイムが短いため、それゆえ一番細かい音符を表現できる楽器です。この音の密度の変化や微妙な強弱でさまざま表現をします。(フラムアクセントとダブルストロークの音の違いなど)
未来の人間はより解像度の高い音を理解できるかもしれません。