投稿者: Kei

 

Artless Rhythm Tap

タップダンスからダンスの要素を取り去り、パーカッションとしての楽しみを求めた飾り気のないタップを、アートレス・リズム・タップと呼ぶことにしました。
コツコツといったタップの音が好きなのと、YouTubeなどでいろんな音楽とのコラボレーションを見て興味がわき、二年くらい前からはじめました。

April Steps

「北野武×志村けん タップダンス×三味線で奇跡の共演!」

この動画を最初に見た時、なんてかっこいいんだと思いました。この組み合わせでエンターテイメントできる、このお二人の深みはアートに根ざしていることを感じさせられます。

パーカッションとして演奏するには、わかりやすい譜面をつくる必要があります。タップには多数のステップがあり(単体ステップよりステップのコンビネーションが多数ある)、記譜をするためには、ステップを限定する必要がありますが、それではタップの魅力が減ってしまうので、ステップには自由度を与え(限定しない)、足の使う部分(6種類)を記号化することによって表現したいと思います。

左足つま先 <p| ※トゥとボウルを区別しない=どちらでも可

左足かかと <b| ※ヒール

左足全体 <B| ※スタンプ

右足つま先 |q> ※トゥとボウルを区別しない=どちらでも可

右足かかと |d> ※ヒール

右足全体 |8> ※スタンプ

テキストデータとして扱うため便利なので、足の位置がイメージしやすいアルファベットと数字で記譜します。ブラケットは文章の中で説明するときに使い記譜では使用しません。休符は-(ハイフン)、末尾のA~(Asymmetry) は一つのパターンで左右が対称でないものを表します。

(https://ktap.artより)

タップを練習しているときにいつも思うのですが、すごい全身運動になります。ウォーキングやランニングといった運動と違うところは、何kmでおわりとか、何分までやるとかでなく、リズムとして気持ちよく聴こえるまでやってしまうため、夢中になりがちです。

そんなこともあり、Artless Rhythm Tapの実用として楽しみながら足を動かすことが健康に結びつくのではないかと思い下記サイトをつくってみました。

https://ktap.art
http://ktap.iiv.jp

足を動かす手順(足順?)が動画と文字により明確なので練習がしやすいのではと思っています。ドラムのリズムパターンのようなものに近いかもしれません。これを組み合わせて新しいリズムを作ることができます。

今後もパターンは増やしていく予定です。

※今年のゴールデンウィークは新型コロナウィルス感染予防のためのStayHome週間ということで自宅にこもることを余儀なくされます。もともとこの連休でゆっくりと作ろうと思っていたサイトですが、このご時世、何かのお役に立てるかもしれないということで予定をはやめて立ち上げました。全動画の収録、編集、アップロードを今日一日で仕上げましたが、その他はまだできていませんので、追々完成させていく予定です。

Cello Fingerboard Chart

弦楽器教室の発表会の季節がやってきました。ViolinとCelloの両方で出演しようと意気込んでいましたが、曲の難易度の高さからCelloのみにしました。
3月のライブにひきつづき新型コロナの影響で中止になる可能性もありますが、いずれは演奏してみたい曲なので力が入っています。

曲はジョン・ウィリアムズ作曲の映画音楽「シンドラーのリスト」です。
この曲はメロディの跳躍が多く、しかもハイポジションを多用するためどの指でどの音を弾くかというプランニングがかなり大変です。そのためフィンガーボードを作ってみました。

実は、このようなハイポジションまであるチャートがなかなか見つかりませんでした。しかも移動距離をイメージしやすくするために、音程位置を正確に表しています。音程の間隔は以下の数式で導いています。

12(1オクターブ)で0.5、24(2オクターブ)で0.75を指しています。(12平均律なので波長は12乗根の逆数)
またこの曲はもともとバイオリン曲なので、参考までにE線を一番上に配置しています。

Violin : G-D-A-E
Cell & Viola : C-G-D-A

この曲の最低音は、G線の開放GからA線開放の2オクターブ上のAまで使います。
このテーマ曲の映画については触れませんが、その内容が表現されたかなり心揺さぶられる曲です。冒頭の部分を記譜してみました。


2小節目のこの曲の最低音G。この跳躍は深さ(分散和音的にいくのならA)が、とても印象的です。

大変重いテーマの映画音楽ですが、Celloの表現力が遺憾なく発揮される曲なので、心してかかりたいと思います。

Upright Bass

一般的な歌ものの曲を聴いてベースラインを歌える人は、なかなかいないと思います。それだけ目立たない存在なのですが、ベースパートがないと、スカスカで不安定な曲になってしまいます。まさに曲の土台となる存在です。そんなベースラインなので安定的なフレーズを演奏すると思いきや、暴れまくって演奏していてもそれを感じさせないかっこいい曲があります。
「あの鐘を鳴らすのはあなた」(歌:和田アキ子)
1972年 作詞:阿久悠,作曲:森田公一

このヒット曲のベースラインがこんなにかっこいいとはベースという楽器をやらなければ知ることはなかったでしよう。
コントラバス(以下CB)を昨年の夏から習い始め、練習用にとりあえずアップライトベース(以下UB)を買いました。とりあえずというのは、CBがでかく高価な楽器なので運指の練習だけでもという目的でした。ところがピッチカート奏法(指ではじく奏法)で弾いた音が、芯があってとても快感で病みつきになりました。アナログシンセのようなゴン、ゴンという音が好きで、指が痛くなるのも忘れて夢中になってしまいます。
いつもはドラムをやっているバンドで、この曲をやることになりベースを弾かせてもらうことになりました。(この曲がかなり難しいのも知らず・・またUB用向きではないことも考えず・・)
この曲のサビは王道のコード進行(Eb-Cm7-Ab-Fm7-Bb7-Eb)を合計6回繰り返すのですが、すべてフレーズが違い、バリエーションを学べます。難易度は高いのですが、それを上回るモチベーションがあったのでチャレンジしてみました。
CBとの関係は・・というと、 UBを弾いたあと教室でCBを弾くと、やはり弓はいいなぁという感じがします。でかい楽器を鳴らし切るという意味では、弓は必須です。

ところが、せっかく練習したのですが、新型コロナウィルス感染拡大のため、例にもれずバンドのライヴも中止となりました。このまま何もしないのもなんか残念なので、サビの部分だけ動画を撮ってみました。

かっこいい曲なのにそれが表現できずスミマセン。まだまだへぼいですが、何年か後に見て、いい思い出になればと思います。
ベースって意外と自由にフレーズを創作できるのかもしれません。メロディラインとは無関係でいいし、コードのルートも外せるし、ドラムのようなパターンにも縛られない。。。なんか言葉を話している感覚に近いものを感じました。

オケは懐かしいYAMAHA QY70を引っ張り出してきました。これが日の目見ることになったのは、有意義でした。

Metric Modulation

メトリックモジュレーションと呼ばれるテンポが急に変化したような効果を感じるリズムパターン(BD:バスドラム,SD:スネアドラム,HH:ハイハットのドラム音源)をSonicPiで作ってみました。
実際にテンポは一定なのですが、譜割やアクセントの置き方でテンポが変わるような効果が得られます。

ここでは4つのパターンを試してみました。


#1 アクセントは無視して譜面どおり
#2 アクセント部分をBD,SDが交互
#3 #2の16分音符3つ分を4つに変化させたもの
#4 #3の後半を倍のテンポにしたもの

#3,#4はあまり実用的ではないですが、ちょっとチャレンジでした。
しかしこの前半のアプローチは4打分を一つのまとまりとしてアクセントとアクセスの間にはめ込むようなことはドラムのフィルインなどでは使ったりします。
考え方としては、1拍は16分音符4つ、3連符だと3つ、つまり4->3の変換とすると、その逆16分音符3つ分を3連符と見立てて、これを元に戻す、つまり4つに変換したものです。

以下それぞれのバターン固有部分のソースコード。
tk4は16分音符の長さで0.15s。1拍は0.15×4=0.6s。60/0.6=100で100BPMです。
これだと3連符がキリのいい数値となるので選びました。

メトリックモジューションは、なかなか一般的な曲では少ないのですが、生バンドの演奏で決まると本当に気持ちいいです。リズム感を鍛えるためにもこのようなシーケンサで練習するのもいいかもしれません。

この実験をしていて、Drumsのテンポに対する支配力をあらためて感じました。

Whole Tone Scale

オリビエ・メシアン著「わが音楽語法」。60年以上前の書籍ですが、最近その新訳版「音楽言語の技法」が発売されたことをきっかけにいろいろと勉強しています。「移高が限られた旋法」について書かれていることは知っていたのですが、リズムに関する記述が多いことが意外でした。
この「移高が限られた旋法」の第1旋法が移調が2回しかできない全音音階(Whole Tone Scale)です。

「もはや何も付け加える余地はない。私たちは注意深くこれらの使用を避けよう」と書籍ではスケールの楽譜さら示さずスルーしてしまっています。ドビュッシーなどに使われすぎて面白みがないということなのでしょうか。
ゲーム音楽の作曲をするときなど、ちょっと不思議な浮遊感みたいなものを表現するスケールとして使ったことがありますが、「鉄腕アトム」の効果音などでも使われています。
ドミナントモーションができない、マイナーコードがないなど調性があやふやになることから、音程感のある打楽器を叩いている感覚にもなります。(マーチングバンドで使うSixtetのような..http://beflat.iiv.jp/xml221) そういう意味ではリズムが際立つスケールと思えます。

音楽的要素としての面白さに加えて、個人的には数学的、物理的な面白さがあると思っています。
CリディアンスケールとF#リディアンスケールの両方が共存しているようにも聴こえることから、裏と表がつながっているメビウスの帯(表と裏で一回転)のようなイメージを感じます。
# 実数平面上の1回転が複素平面の写像で2回転になる現象もこれに通じるかも..http://decode.red/blog/201911031048/)
ちっと飛躍しすぎですが量子力学の2つの状態が重なっている現象もこれに似ているような・・
ということで、タイトルも「コヒーレンス]という曲を作ってみました。
もっと面白いリズムを使いたかったのですが、テクがないので、表現が難しかったです。(「とりあえずOUTPUT」をポリシー)
# シーケンサを使えばいいのですが、やはり生でやってみたいので。



2022/1/29追記) OpenSeaに登録
https://beflat.iiv.jp/xml543

Dimensionality Reduction 0

芸術の秋。ロシアのヴァシリー・カンディンスキーという抽象画家の作品が最近私のブームです。「コンポジション」というシリーズが構成が美しく、音楽を感じられるからです。前回”The Shape of Rhythm”で視覚的な動きとリズムについてチャレンジしましたが、目に見えない時間とともに消滅する音楽を、静的に見える形で表現することについて、とても興味を持っています。
物理的に言うならば、3D空間の空気振動(時間軸の動き)という4次元(時空)の世界で奏でられる音楽を2次元の平面に落とし込むということは、情報の次元縮退ともいえます。音楽情報を表すとても有効な手段として楽譜というものがありますが、これを発展させた図形楽譜というものもこれに近い存在かもしれません。2次元、3次元のグラフを書くとき直交座標系(デカルト座標系)を使いますが、デカルトが音楽の楽譜をヒントに思いついたとも言われています。
データ解析の世界では、次元縮退の逆の次元拡張により、データを別の角度から見る手法もあります。既存の変数を組み合わせて何らかの演算結果を次元として追加することですが、これは理論研究などではこういったことを知らなくても自然にやっていることなのでしょう。(例えば音楽では差分となる音程情報など)
数学的な言葉はどうしても難解に聞こえがちですが、風景を絵に描くとき、遠近法を使って立体的に表現する方法も、次元縮退と言えると思います。
図形楽譜とカンディンスキーの抽象画への興味から何か描いて見たいと思い、「とりあえずOUTPUT!」のポリシーの元、私も創作してみました。

ポイントは、リズムを感じられるかどうかですが・・(音はありません、なんでYouTube? 音楽だから・・)

アートといえば、先日会期を終えた「あいちトリエンナーレ2019」。私も2回ほど足を運びました。
あの話題でもちきりのこのイベントでしたが、私は地下で展示されていた、加藤翼氏の作品が印象に残りました。手足をお互いロープで縛られたミュージシャンがアメリカ国家を演奏するというものですが、ギタリスト、ドラマー、キーボーディストがこのロープに束縛されてなかなかうまく演奏できない様を表現しています。これは動画でしたが静止画でも十分インパクトがある作品だと思います。
これこそ、あの「表現の不自由」なのではと思いましたが、私はこういう表現の手法が好みです。(例えば「水の音を表現したください」と言われ録音した音を聴かせるような手法は、ちょっと・・)
しかし「不自由」をいう前に「自由」についてもう少し考える必要があるのではと思います。この議論は「報道の自由」が問題になるときの議論に似ていると感じました。

「私たちが普段「石ころ」だとしか感じないものを、アーティストが独自の視点で手を加えることで、まったく違った意味や価値を持たせる。それが「面白い!」とか「美しい!」とか「可愛らしい!」という感覚や感情を引き起こしたら、1500円だろうと3000円だろうと買う人がでてくるかもしれません。」(PHP新書「アートは資本主義の行方を予言する」山本豊津著より)
このイベントが話題の展示物の価値を上げたのは間違いないと思います。

The Shape of Rhythm

音楽の重要な要素のリズム。しかしながら、作曲プロセスで使うコード理論のようなものはないように思いますが、ドラムセットを叩くドラマーが自然と見につけていると感じることがあります。ドラムセットというところかポイントなのですが、低音から高音まで一人で構成しながら演奏するバランス感覚が楽曲の構成に似ていると思うからです。
多点キット(多数のドラム、シンバル等で構成するドラムセット)で有名なテリー・ボジオ氏が、みずからのセットを「オーケストラ」と呼ぶのも理解できます。ワンマンオーケストラで有名の神保彰氏の演奏を見てもわかりますが、手足で一通りの音源を操作できます。
ではドラマーのどこにリズム理論を感じるかですが、その一つにシンコペーション(アクセント)の表現の仕方にあります。初心者のドラマーにありがちなのが、曲のアクセントになる部分を例えばシンバルとバスドラを同時に叩くといった、ほとんど一つのたたき方をします。熟練したドラマーは、このアクセントのバリエーションを多数もっていて、アクセント音の前後の装飾音符の取り方も含めると、さらに増えます。また音と音の間の足りない音を補間する表現もドラマーならではの特徴があり、これら楽曲の流れの中で自然になるように決定されます。(どんなドラマーも結構似たアプローチが多い) これは楽曲の中で自然に感じるリズムの形があるとも言えます。
音楽のリズムが体の動きからできている、という研究をする人もいますが、納得のいくところです。
(二本の手、二本の足から生まれるリズムは、そのものかも)

音楽理論は倍音列など数学的に説明できるものも多いですが、リズムも同様で幾何学がそのイメージに近いと思っています。(対称性や周期性なども)
ドラムの奏法で形が見えるのは、ブラシです。主にJazzなどで使われますが、ブラシの軌跡や移動の速さによって様々な音の表現ができます。


これを探求するのには、まだまだ時間がかかりますが、ここではファーストチャレンジをしてみたいと思います。(不完全でもまずはOUTPUT !)
音楽仲間のM君が、私のブラシ奏法をみて、KAOSSILATORというガジェット音源(指でバッドをタッチして音を演奏)に似ていると指摘してくれました。(M君はピアノをやるのですが、たまに私のヴァイオリンと合わせて遊んでいます。)
これは面白いかも、と思いKAOSSILATORとコラボしてみました。


(異色の組み合わせが好きな自分としては、結局、小難しいこと抜きに楽しくやってみただけでした)

話は変わりますが、先日私のチェロの先生が出演する古楽のコンサートに行ってきました。今とは違う当時の楽器で演奏するのですが、サクバット、テオルボといった初めて見る楽器もあり、とても興味をそそりました。新しいコラボの探求もいいですが、古い音楽の探求も面白いなあと感じました。(最後に演奏された、ジョヴァンニ・バッティスタ・ベルコージの「スターバト・マテル」。涙腺が・・)
あとドラムセットの魅力として、ポリリズム的な表現を一人でやりやすいことがあります。
新しい音楽を発明するポテンシャルを持っている、そう信じていろいろとトライするのが楽しいこの頃です。

Bring the Beat

久しぶりに、ドラムマガジンの 誌上ドラムコンテスト”Bring the Beat”に応募しました。
といってもかなり前で何を叩いたか記憶がないですが・・
きっかけは、最近ブラシ奏法を見直して練習していたところ、ドラムコンテスト課題曲のラップを聴き、直感的に、これはハマるかも、と思ったからです。


(Love Jojo Mayer)

ブラシに再び興味をもったのは最近習っているヴァイオリンがきっかけです。より速いフレーズやスピッカートという弓を弾ませるフレーズを練習しているとき、ブラシの感覚を思い出しました。

・2次元の線(弦)を擦るヴァイオリン、3次元の面(ヘッド)を擦るドラム。
・2次元の線(弦)を叩くピアノ、3次元の面(ヘッド)を叩くドラム。

一つ次元の高いドラムの表現力。可能性を新たに感じます。

他の記事のように、適当な音源とブラシ奏法のドラムで何か曲を作ってYouTubeにアップしようと計画していたところでしたが、コンテスト方の締め切りが今月末なので、まずはこれから製作しました。
しかし、ドラムセットがかなり古い・・です。私が学生の時に中古で買ったやつです。べダル類もかなり古くちょっとキーキー音がなりますが、そこはお許しを^^; (新しいの欲しいな〜) ヘッドはブラシ用にコーテッドヘッドに張り替えました。
素朴な三点セット、最近はこれで十分な気がするこの頃です。

このようなコンテストは練習のモチベーションがあがる上、たくさんの人と体験を共有できるて、とても楽しいです!(YouTubeにはいろんな解釈のプレイがあってすごい刺激になります)
いいタイミングでいい曲をプレイできて、本当よかったです。

Atonal Music

無調音楽という調性(ハーモニー、スケール)を感じられない音楽というものにチャレンジしてみました。

「調的な原理と無調の原理とが、完全な対立物であるとは私には思えない。後者はむしろ、調的なものの継続的な発展の帰結であり、そこには漸進的な変化があるものであって、断絶や暴力的な跳躍などはないはずである」(「バルトーク音楽論選(ちくま書房)」より)

調性音楽の理論の上にたってその解釈を深めことによって無調というものを考えていくという姿勢と解釈しますが、無調をどのようなものと定義するところから、形にするところまで幅広い作業が必要だと思っています。無調に対する解釈にもかなり幅があることから(でたらめとは違う)、誤解を受けやすいテーマですが、それだけ様々な角度から音楽を見つめることができる魅力的なテーマです。

調性を感じる音楽というは、1オクターブ12音の音の選択に偏りが規則的な偏りを持っています。これを回避するため無調では12音全て平等に扱う手法がありますが、たとえ12音を使うにしてもドレミファと2度音程が続くとスケール感を感じてしまうことから、音程もすべて違うものを使う試みがあります。

参考) 総音程音列

(Lisp (+ List Processor))

私の試みとしては、12音を使うことよりも音程感を希薄にすることに重点を置きたいので、全音音階の6音C,D,E,F#,G#,Bb)で組みたてます。(ジョージラッセルのリディアンクロマティックコンセプトでは補助オーギュメントスケール。CメジャースケールのFより倍音列的にはF#にする(Cリディアンスケール)方が自然という。鉄腕アトムの曲でも出現)
6音にすることによって、短3度音程がなくなりマイナースケール、マイナーコードが出現しなくなります。また完全5度もなくなりドミナントモーションも不可能になります。また短2度もなくなり、不協和音がなくなり聴きやすくなります。
ただそれでも2度が続いてしまうと、リディアンスケールを感じてしまうので、12音の総音程音列と同じしくみで6音による総音程音列をつくりました。

なんと4つの音列しか存在しません。かなり安易ですが、この4つの音列を4つの音域でおなじみSonicPiを使って鳴らしてみることからはじみてみます。

音列は音程をもとにして算出しているので、開始する音は任意です。第一音が全て同じだとその音の支配力が高まるのでづらしています。また低音ほど音数をすくなく、6音という少ない音数でループしてしまうので、ちょっとぼやかすためにポリリズムっぽくしています。
こう考えると曲として聴かせる工夫にはリズム理論が重要になってくることを実感します。
音楽理論と呼ばれるもののほとんどがハーモニーはピッチに関するものですが、それだけリズムは体系化しにくいのかもしれません。
(上で紹介したバルトークの書籍ではブルガリアンリズムについて多く書かれており、これもとても興味深いです。)

打楽器などの倍音が多く音程感を感じにくい楽器を使うことによって、無調音楽を表現する試みもあるようです。

前回の投稿でつかった、テナードラムは6個の太鼓を鳴らしますが、この音程感で曲を「歌う」こともできます。

Nimrod

「われわれの時代の音楽は、無調の方向に決定的に向かっている」

これも上記書籍の引用ですが、ひと昔前にはやったサンプリングミュージックはこの流れの中で説明できるものなのかもしれません。また無調というカテゴリーにはいるかどうかわかりませんが、この単調なスネアドラムの音だけの曲がパフォーマンスとして成立する以下の動画を見た時、パフォーマーの素晴らしさはもちろんですが、オーディエンスもすばらしいと思いました。

音楽も人も進化することがよくわかります。
このマーチングスネアドラムの音はハイピッチでリリースタイムが短いため、それゆえ一番細かい音符を表現できる楽器です。この音の密度の変化や微妙な強弱でさまざま表現をします。(フラムアクセントとダブルストロークの音の違いなど)
未来の人間はより解像度の高い音を理解できるかもしれません。

Nimrod

今年の第160回芥川賞を受賞した小説「ニムロッド」。ビットコインの莫大な資産をもつ人間の王ニムロッドが、役に立たない「駄目な飛行機」のコレクションを趣味とするが、この「駄目な飛行機」がもうこの世になくなったとき、人間でいられなくなるというストーリが、いろんなことを連想させてくれました。

不完全なものに愛着をもつ気持ちというのは、そこに人間らしさを感じます。笑いが生まれるのもそんなときでしょう。
私はアナログシンセサイザが好きなのですが、この飛行機に近いものを感じます。(バネルのルックスが計器のよう・・)
発売時は高価でなかなか手に入れることはできませんでしたが、当時YAMAHAの名古屋店では多数のアナログシンセが専用ブースがあり、随分と入り浸りました。鍵盤を押しても思うように音程のある音がでなかったりノイズがでることかとても衝撃的でした。デジタルシンセの時代になって、逆にアナログが見直されたときゲームの音楽制作をしたこともあり、テクノ系の音楽にはまりました。しかし今アナログシンセをさわる感覚は、これとは違い愛着に近いものがあります。
現在聴くとすればダンス系の曲のベース音くらいでしょうか。これもかなり加工されていのでピュアなアナログシンセの音はほとんど聴くことがなくなりました。

「ニムロッド」にでてくる飛行機のコレクションときいてすぐに思い浮かんだのは、国立アメリカ空軍博物館(オハイオ州デイトン)の展示でした。10年くらい前、仕事でしばらくこの地域に滞在していたことがあり、現場のメンバーから絶対行った方がいいと勧められて行った記憶があります。ライト兄弟が飛行機の開発をした航空機発祥の地でもあり当時の飛行機から現在までの様々な飛行機が展示されています。その大きさに圧倒されました。

またこの地はWGIというマーチングバンドのカラーガード、パーカッションの大会が行われているところです。軍隊があることが関係しているのかもしれませんが、DCIというマーチングバンドの大会もこの地域で行われます。(注:当時から私の知識はアップデートされていません) (https://wgi.org/)

WGIのパーカッション部門の大会は、マーチングバンドが管楽器を省いて打楽器だけにした構成なのですが、打楽器だけの楽曲なのでドラマーにとってはなかなかエキサイティングなものです。ベース、テナー、スネアドラムが細かいリズムでユニゾンするときはまるでマシンガンを連想させます。しかし人間がどこまで正確に叩こうと機械的に聴こえないから不思議です。限界がありそこに安心感があります。昔YMOがテクノミュージックといわれ機械的に冷たい感じ、と評価されていましたが
(無機質なアナログシンセとタイトで正確なドラム、やっている人たちはそれを狙っていた) 実際は人間味がある音楽で、これに近いかもしれません。(人間が近似すればするほど人間味が際立つ)


(動画を静止画にしているので画質が・・10年以上まえのデジカメですし・・)

これまでもマーチングドラムは好きだったのですが、ドラムセットと一緒のフィールドで考えたことがありませんでした。WGIを見たときに多くのチームでこの組み合わせで演奏していて、こういうのもありなんだ、という感じにさせてくれました。(このWGIに刺激されて、アメリカから帰ってからはブラスト人気も手伝い、パーカッションチームを作っていろんなイベントで演奏したこともありました。)
このときの記憶が蘇り、また叩いてみたくなりました。

ところで、「ニムロッド」とは?
Weblioで調べると、聖書からニムロデ(Noahの曾孫で狩りの名人)、狩猟家、とあります。
だから戦闘機の名前とかに使われるのですね。
またエドワード・エルガー作曲「エニグマ変奏曲」第九変奏の愛称でもあるようです。
安らかなハーモニーから入る曲で、戦没者追悼によく演奏されるようです。
3/4拍子の記譜ですが、2/4,4/4の変拍子っぽく聴こえます。(波乱と安堵が同居するような・・)

ということで、久しぶりにいじるアナログシンセYAMAHA CS-15とこれまた久しぶりに叩くマーチングテナードラムでコラボしてみました。シンセはエルガーの「ニムロッド」の冒頭のメロディラインになっています。

ちょっと完成度が低いので、そのうちこっそり差し替えるかも。(来週発表会なのでちょっと練習時間が・・)
シーケンサは使えないので、 LFOでリズムを刻みます。LFOがプロペラのように・・
しかし、こういう組み合わせで演奏するのは本当に楽しいです。
「駄目な飛行機」は有限でしたが、音楽は無限に楽しめます。
(そもそも音楽は不完全なのかもしれません。ピタゴラスはきっとそう思ったと思いますが・・この件はまた)

今回、やはり打楽器はコラボ力があると思いました。またいろいろと試していきたいです。